圧倒的臨場感!まるで映画!「新東京水上警察・朽海の城」

吉川英梨さんの「新東京水上警察」シリーズ
第3弾は「朽海の城」。

日本が誇る、超豪華客船「セレナ・オリンピア号」
の処女航海中に起きる事件!

五港臨時署の熱血警部補・碇拓真らが
東京湾を舞台にハリウッド映画さながらの
活躍を見せる。

超豪華客船「セレナ・オリンピア号」が
世界一周のクルーズを終え、神戸で東京都知事・
鷲尾賢一郎を乗せ、最終寄港地・横浜へ
向かう頃、警視庁五港臨時署に衛星回線で匿名通報が
届いた。「そこに死体が浮かんでいる」!?

発見された遺体には、頭に斧が突き刺さっていた。
匿名通報の発信元は、「セレナ・オリンピア号」の
船内からだった。
そして被害者の身元は、「セレナ・オリンピア号」で
働く技術者だった。

ところが、「セレナ・オリンピア号」でも乗客が
焼身自殺するという事件が起こっていた。
さらに、都知事の周辺に怪しい男の影がちらつく。
都知事を守るSPは、牧田警部補。
碇とは同期の警察官だ。牧田はその男をマークする。

美貌の海技職員で碇の恋人・有馬礼子が、
遺体に刺さっていた斧は、「セレナ・オリンピア号」が
進水式を行った時に使用された支鋼切断用の斧だと指摘した。

碇はすぐさま犯人のメッセージをつかんだ。
「セレナ・オリンピア号を調査しろ!」と。

物語は、冒頭の超豪華客船「セレナ・オリンピア号」
のセレブなシーンから、斧の刺さった死体という
まるで映画のワンシーンを彷彿させるほど、衝撃的だ。
ここでもう心が鷲掴みにされる。

碇たちが乗り込んだ「セレナ・オリンピア号」では
次々と事件が起きていた。
それは幾重にも仕組まれた陰謀なのか?。
碇たちの必死の捜査によって、真相が明らかになってゆく。

やがて、「セレナ・オリンピア号」は、犯人たちの
陰謀に従って暴走を始めた!
東京湾を舞台に、碇たちと犯人との攻防が続く。
そして海上では暴走した超豪華客船が何千人をも
巻き込む凶器と化していた!

映画化すれば、ハリウッド映画をも凌駕する
海上スペクタクルになると思う・・・。
「新東京水上警察」シリーズ第3弾は
とんでもなく面白い!シリーズ最高傑作だ!

『新東京水上警察 朽海の城』
著者:吉川英梨
出版社:講談社(文庫)
価格:¥740(税別)

「SROⅦ」シリーズ最新作!シリアルキラーの後継者

大人気の警察小説シリーズ「SRO 警視庁広域捜査専任特別調査室」
第7弾が発売されました。
前回のⅥから待ちに待った最新作です!

Ⅵでは、SROの面々が命懸けで最強の
シリアルキラー・近藤房子を逮捕した。
SROの副室長である芝原麗子は、近藤の罠に
はまり顔に大けがを負ってしまった。
それでも、芝原は近藤に戦意を喪失させるほどの
ダメージを与えた。
そして、近藤房子は東京留置所特別病院に入院した。

新宿で闇金業者が殺害された。その現場から亀戸で
遺体となって発見された少年の指紋が見つかった。
SRO室長・山根新九郎は、法歯学の見地から少年の
発育に遅れがあったのだ知った。
なぜ、殺害現場に少年の指紋が残っているのか?
そしてその少年はなぜ殺されたのか・・・?
謎が深まる事件だ。
その事件の捜査のため、科警研の夏目を頼った。
SROチームの面々はそれぞれ個人的悩みを
抱えながら、捜査を続けた。

かたや、瀕死の重傷を負った近藤房子は
SRO室長・山根新九郎と芝原麗子から取調を受ける。
まだまだ傷の痛みが残っている近藤だったが、2人からの
取調をのらりくらりとかわしていた。
そんな状態の近藤が興味を持ったのは、毎日ひどく
落ち込んでいる一人の担当看護師だった。
シリアルキラーである近藤は、たくみに人の心に入り込む。
人の共感感情をくすぐり、自分の味方に引き寄せるのだ。
近藤は自分の後継者として、彼女にターゲットを絞る・・・。

今回の「SRO」のテーマはひどく重い。
児童虐待、ネグレクト、介護問題、詐欺、不倫・・・。
人の心を疲弊させる現代の日本が抱える大きな問題。
その苦しみや心の疲れが澱のようにたまると
殺意が芽生えてくる・・・。
身近に起こりうる社会の闇。
その闇にはまり光を見失った時、人はどうなるのか?
人は、感情の一線を越えると、こうまで歯止めが
効かなくなるのかと・・・・。
あらためてその恐ろしさに気づく。

冒頭の不穏なシーンの描写は、明らかに重大事件の予感。
そこからの展開に呑み込まれてしまう。しかも別方向からの
さらなる不穏のアプローチ!!
いったいこれはどう繋がるのか!?
いっき読み必須の警察ミステリ。

『SROⅦ 警視庁広域捜査専任特別調査室 ブラックナイト』
著者:富樫倫太郎
出版社:中央公論新社
価格:¥880(税別)

徐々に姿を現す、神!その正体は!?「クランⅤ警視庁渋谷南署巡査・足ヶ瀬直助の覚醒」

警察内部に巣食った巨大な闇と警察の正義を
全うしようとする、密命チームとの激烈なる闘いを
描いた、「クラン」シリーズ第5弾。
「クランⅤ 警視庁渋谷南署巡査・足ヶ瀬直助の覚醒」。

前回は、上郷の機転により渋谷スクランブル
交差点でのテロを防ぎ、事件に関わる警察官を
大量検挙した「クラン」。
神の前に素顔をさらし、彼らを挑発した上郷。
その暴挙に、神&警察閥はついに本格的な
宣戦布告を行使する。

アジトに残ったクランのメンバーは、上郷、岩沢、川内、晴山、
ワイズ、平津戸、そして足ヶ瀬巡査、彼を頼る少女ミチュ。
だが、ソンシが行方不明だった。

そんな中、上郷は残ったクランのメンバーの結束を
はかるため、自分自身の過去。そして「神」と警察閥の関係と
その恐ろしさを説く。
川内はその話をどうしても信じることが出来ない。
彼にとっては、身内同士で争うことこそ悪だと思って
いるからだ。正義はいったいどこにあるのか?

全ての黒幕である「神」の魔の手は、ついにクランの
メンバーへ迫る!
次々と消える仲間たち。そして敵にまわる日本警察!

追いつめられるクランの仲間たち。上郷一人が冷静に
事態を把握していた。
絶対説明の窮地の中、川内たちは敵の中枢に迫っていた。
次第に明らかになる警察閥の面々と、「神」の使徒・
裏理事官の正体!

だが抵抗もそこまでだった・・・。
またもや警察官が犠牲になったのだ。
誰が味方で誰が敵なのか?もう誰も信用できない・・・。

そして、今まで沈黙を守り続けていた、足ヶ瀬直助が
瀕死の仲間を抱きながら、ついに自分の使命に気づき
覚醒する・・・!
刑事たちに残された秘策とは?

最終局面に向け加速する次回、6巻に続く!

『クランⅤ 警視庁渋谷南署巡査・足ヶ瀬直助の覚醒』
著者:沢村鐡
出版社:中央公論新社(文庫)
価格:¥700(税別)

今までいない展開!おぞましさ半端ない!「鬼を纏う魔女」

吉田恭教さんのオカルトミステリ、探偵・槇野&鉄仮面女性刑事・
東條刑事シリーズのスピンオフ作品「鬼を纏う魔女」を
読みました。

吉田恭教作品にすっかりはまってしまったのです。
「鬼を纏う魔女」は、鬼に魅入られ狂ってしまった
人間たちのおぞましさが描かれています。

婚約者に裏切られ、自殺を決意した美貌の女性は
富士の樹海に入っていった・・・。

山梨県警に死体遺棄事件の連絡が入った。
雑木林の中から地中浅く埋められた女性の遺体が発見されたのだ。
捜査一課の若き刑事、桐生は先輩刑事の宇津木らとともに
現場に向かった。
遺棄された遺体の身元はあっさり判明した。
その女性は東京の六本木でのクラブで働いていた。
桐生たちは早速六本木へと向かう。

一方、警視庁捜査一課の鉄仮面刑事・東條有紀は、
ヤク中による通り魔事件の捜査をしていた。
4人の被害者があったが、一人だけ生き残った。
病院に搬送されたが、生存の確率は5分5分。
若く美しい女性だが、その胸には、鬼の入れ墨が
施されていた。しかもその女性の持ち物は、
赤外線暗視スコープに携帯用GPS、ブラックライト。
この女性は何をしようとしていたのか?
東條は、この女性の身元を探ることにした。
まず、入れ墨からだ。彫師を探すため、
元組対刑事で現在は探偵業に励む、槇野に連絡をとった。
槇野から紹介された彫師に聞くと、女性の胸に
施された鬼の入れ墨は、その筋でも有名な彫師だった。
だが、その彫師はマンションから飛び降り自殺を図ったという。
東條は、女性の入れ墨と謎の持ち物、彫師の
自殺が偶然の一致でないと感じる。
東條は、さらに女性の戸籍を調べると不可解な記載に行き当たる。

鬼の伝説が意外なものと繋がり、おぞましい展開となる。
その恐ろしさは幽霊どころの比ではない。
狂った人間の所業こそ一番恐ろしいと言える。
その禁忌に焦点を充てたこの作品。
おぞましいけど、面白い。どんどん面白くなってやめられなくなる!!
しかし!!読み進むと、全身が総毛だちます!

『鬼を纏う魔女』
著者:吉田恭教
出版社:南雲堂
価格:¥1,800(税別)

横溝作品を彷彿とさせる「化身の哭く森」

地元で世界遺産・石見銀山のある大田市在住のミステリ作家
吉田恭教さんの最新作『化身の哭く森』(講談社)
を読みました。

『可視(み)える』、『亡者は囁く』(いずれも南雲堂刊)に続く
元組対刑事で探偵の槇野と警視庁捜査一課の鉄仮面刑事・東條有紀
がオカルト的な事件の謎を追っていくというシリーズの最新刊です。

今回は広島と東京を舞台に、2人が別々の事件から、
ある連続猟奇殺人事件のカラクリを解く!という
ストーリー。

広島の山奥で行方不明になった祖父が7年経過して死亡が認められ、
葬儀が行われた。孫で大学生の春日は、一度大学の仲間と
祖父の痕跡を探すため山に入っていた。その時は何も
見つけれず山を下りたのだった。

その後祖父の遺品を調べると、怪しげな探偵の名刺を発見。
春日たち遺族は、祖父が行方不明になる前に
探偵を使って何を調べていたのか?調査してほしいと
鏡探偵事務所に依頼してきた。調査員の槇野は、新人の
女子調査員とともに、行方不明になった祖父の地元・
広島へと向かう。

一方、警視庁捜査一課の東條有紀刑事らは、
息子が母親を惨殺し息子自身も首つり自殺
を図ったという凄惨な事件の捜査をしていた・・・。

やがて、事件を起こし自殺した青年は、春日と
一緒に山へ入った大学生と判明する。

あの山には入ってはいけない・・・・。
「入らずの山」と呼ばれる昔からの言い伝えがあるにも関わらず、
春日たちはその禁忌を犯した。
町の人たちは、「山の祟り」だと噂する。

山には何がある?なぜそのような言い伝えがあるのか?
母親を殺して自殺した大学生からは薬物反応が出たのだ。
新手のドラッグか?そのせいでもめたのか?
あらゆる推測を重ねる東條だったが・・・。

そんな中、再び山に入ろうと広島へ集まっていた春日と仲間たち。
だが、仲間の大学生たちが次々と非業の死を遂げる。

槇野と東條、別々の調査からまたもや一つの事件へと繋がってゆく。
魅力的な主人公2人が活躍する場面がテンポよく切り変えられ、
一つの事件の謎を追うミステリーより面白さが2倍になっている。
さらにオカルト的な要素が加わることによって、ドキドキ感も
加わりいっきに読ませる。
一作品でもこのシリーズを読んだら、絶対にはまってしまう。
文句なく面白いミステリ。

『化身の哭く森』
著者:吉田恭教
出版社:講談社
価格:¥2,000(税別)

渋くて重厚な警察ドラマ「夜の署長」

「撃てない警官」シリーズの著者・安東能明さんの
文庫新刊『夜の署長』を読みました。

日本最大のマンモス署・新宿署に配属された
新米警部補の眼を通して描かれる、新宿で起きる事件、
人、そこで繰り広げられる生生しいドラマ・・・。

この春東大法学部を卒業した野上賢次は、キャリアとしての
スタートでいきなりの新米警部補だ。
卒業に5年もかかったため、「ダイゴ」とあだ名されている。
そんな彼は、夜間の犯罪発生率が日本一の危険な街・新宿の
マンモス警察署・新宿署に配属された。

そしてそこには、ある理由から、10年間新宿署に勤務する
「夜の署長」の異名を持つ、刑事課強行犯第5係統括係長の
ベテラン警部補・下妻晃がいた。
下妻は強面だが、ものごしは柔らかい。異動の多い上層部からも
頼りにされていた。

新宿では様々な事件が起きる。ホストによる女性客拉致事件。
話を聞いてみると、人気のホストに入れあげた人妻が、店の
払いをツケでするようになり、それが焦げ付いた。回収する
ために仲間のホストと女性を拉致したのだ。こげついた
金額は50万円だった。それを聞いた下妻は単純にそれだけで
ないと感じた・・・。

また、ビルの外壁が落下し年配の男性の頭を直撃。
それがもとで男性が亡くなると言う事件が起きた。
野上は単純な事故とみたが、下妻は男性の頭部に
気になる傷を発見する。

ある社会福祉法人の理事長が駅で転落し亡くなるという事件が
起きた。下妻と野上が聞き込んだところ、理事長が
横領していることが発覚。ちかく監査が入る予定だった
らしく、横領の発覚を恐れ覚悟の自殺ではないかと推察された。
しかし理事長の行動に不可解な部分が出てきた。
下妻たちは裏に何かある!と判断しさらに捜査をすすめる。

新宿駅のロッカーで爆発事故が起きた。
警視庁本部、さらに公安部までが駆けつけ、
周囲の警戒と聞き込みを行った・・・。
爆破事件の裏には何があるのか?
また、下妻にとって因縁めいた要素があった。

4つの短編は、事故死や行き過ぎたツケの回収の末の
拉致事件・・・などすぐにでも解決しそうな事件ばかりだが、
下妻の丁寧な捜査により、人間のドラマに行きつく。
そして、そこから単純な事件の裏に隠された凶悪な事件を暴いてゆくのだ。

キャリアだが警察社会ではずぶの素人の野上警部補は、
刑事として真摯に事件に向き合う下妻の姿に、次第に
下妻を尊敬するようになる。
本格的な警察小説であり、ミステリーとしては
充分に練られ、じっくり謎解きを堪能できる作品。
また、新米刑事の成長の物語でもある。

『夜の署長』
著者:安東能明
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥640(税別)

江戸時代の怪物の恐ろしさを描く!「荒神」

宮部みゆきさんの異色の時代劇、
「荒神」(新潮社)を読みました。
今月、文庫化されたばかりです。

凄く恐ろしい怪物が登場する時代小説で、
読み進むうちに、なんと「シン・ゴジラ」の
ゴジラのように、怪物の体が進化する
シーンがあり、おー、凄いと思いました

下野の小藩、香山藩の山村に突如出現した、
山の如く大きい怪物。
住民を喰らい、家家を踏みつぶし、一夜にしてひとつの
村を破壊した。
そんな中、一人の少年が逃げ切った。行き倒れていたところを
隣藩の永津野藩の藩主側近・曽谷弾正の妹・朱音に救われる。
朱音や従者たちの懸命な看病によって、息を吹き返した少年は、
にわかには信じられない出来事を話した。

怪物はもう近くに来ている、永津野の屈強な武士が
相手でも決して倒せないだろう・・・・。

片や、香山藩藩主小姓・小日向尚弥は、土地の流行り病
「かんどり」に罹り臥せっていた。
病が癒えた頃、村の異変を耳にする。
さらに香山藩藩主の愛妾が生んだ、おつぎ様が「かんどり」
に罹り、危篤状態であると知った。
藩主の愛妾・お国様の思惑で窮地に立たされた小日向は
友人の父で、自らも父と慕う、志野兵庫之助から
身を隠すように云われる。
小日向は、異変が起きた村で警護の仕事をしている友・
志野達之介の身を安じ、志野家の従者・やじと共に
村へ向かった。

辿り着いた村は、死屍累々の地獄絵図が広がっていた・・。

怪物の名は、「つちみかどさま」。
それが、なぜ突如現れたのか?
事情を知る、老人から語られる驚天動地の真実!

憎み合う、両藩の思惑を背景に、怪物が暴れまわる!
全ての人を喰らおうとする怪物は、人間の憎悪の
かたまりのようでもある。
人間の「邪悪」の塊!

いかに倒せるかのか・・・?
つちみかどさまが作られた真実が実に恐ろしい!!

2018年NHKBSプレミアムにてスペシャルドラマ化

『荒神』
著者:宮部みゆき
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥940(税別)

司法の歪みを鋭く抉る!「潔白」

「尖閣ゲーム」の著者、青木俊さんの新作は「潔白」。
「冤罪」と「死刑」という社会派の問題点に真っ向から
挑んだ、社会派ミステリー作品です。

この作品は、文庫X「殺人犯はそこにいる」の著者で
ジャーナリストの清水清氏協力のもと、1992年に
起きた「飯塚事件」をモデルに描いたもの。
フィクションですが、ノンフィクションに近い読み応えです。

30年前に小樽で発生した母娘惨殺事件に前代未聞の
再審請求が起こされ、札幌地裁に激震が走った!
被告の死刑はすでに執行済みで、もし冤罪ならば
国は無実の人間を殺したことになる!

司法の威信をかけた攻防が始まる!
偽造、隠蔽、証拠の廃棄・・・・
検察側は再審を阻止すべき、ありとあらゆる
手段を講じてきた。

片や、原告側は30年前に無実の罪で逮捕され、
再審請求中に突如死刑執行された兄の汚名を
灌ぐため、妹は冤罪事件を扱う人情弁護士とともに
ひたすら、新たな証拠集めに奔走していた。
真実を知っているのは、当時幼かったこの妹。
しかし、警察は妹が幼すぎると証言を採用せず
事件当時のアリバイもないということで
逮捕に踏み切っていたのだ。

さらに、DNA型鑑定は足利事件の
鑑定方法が採用されていた。
当時のDNA鑑定方法は、科警研が誇る最新式の
鑑定方法で、多くの事件に採用されていた。
もし、この鑑定方法が間違いであり証拠能力が崩れたと
なると、このDNA型鑑定で立件した事件はほぼ
冤罪の可能性が出てくるのだ。
司法はそれをなんとしてでも避けなくてはならない・・・。

検察の横暴と非道に何度も煮え湯を飲まされるが、
決してあきらめない原告側。

双方の攻防が迫力に満ちた筆致で描かれている。
どれほど無実の可能性がある証拠を提示しようと
決して過ちを認めない、司法と国。
こんなことがあっていいのか?
これが現代日本の司法のどうしようもない「歪み」だ。

司法は弱者のためにあるべきではないのか?

その矛盾に鋭く斬りこんだ、社会派法廷ミステリの傑作だ。
今こそ読むべき作品だと思う。

『潔白』
著者:青木俊
出版社:幻冬舎
価格:¥1,500(税別)

幽霊か人間の悪業か?どっちも超怖いホラーミステリー。「可視(み)える」

「変若水(をちみず)」で、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞
優秀賞を受賞し作家デビューした、島根県在住のミステリ作家、
吉田恭教さん。
デビュー作が面白かったので、その後に「堕天使の秤」を読み、
さらに面白かったので、怖そうな表紙の「可視(み)える」に
トライしてみました。

幽霊と猟奇殺人事件が交差する、ホラーミステリーです。

警視庁組織犯罪対策課の刑事だった槇野は、自信の犯した
過ちから警察をクビになり、元上司だった鏡に拾われた。
鏡は探偵事務所を開いており、槇野を捜査員として雇った。

ある時、「幽霊画」の作者を捜してほしいと画商から依頼を受けた
槇野たちは、その幽霊画が収められている島根県のある神社へと向かった。
世界遺産・石見銀山で有名な土地に佇む「龍源神社」で
「幽霊画」と対面した槇野は、その絵のあまりの恐ろしさに絶句する。

やがてその絵の作者を突きとめた槇野は画家に会いに
島根県松江市に向かった。
槇野は画家と話すうち、何か秘密があるのではないかと疑う。

一年後、警視庁捜査一課の東條有紀は、ベテラン刑事でも目を
背ける残虐な猟奇殺人事件を追っていた。
猟奇殺人事件の被害者が次々発見されるが、いずれも
ひどい拷問のあとがあり、次第にそれがエスカレートしていた。

同じ頃、男性が陸橋から飛び降り、通過しようとした車に
ぶつかり亡くなるという事件が発生した。
亡くなった男は、あの「幽霊画」を描いた画家だった。
警察はその状況から自殺と断定したが、例の画商から、
「彼は自殺ではない、彼と約束していた。調べて欲しい」と
槇野たちのところへ再び調査の依頼が入った。

槇野たちが調査する、幽霊画と画家の事件、
東條たちが捜査している猟奇殺人事件がある1点で結びつく。

警察に未練を残しながら、探偵として生きる槇野と
自身の出生の秘密を抱え、鉄仮面とあだ名される女性刑事
が互いの腹を探り合いながら難事件を追う。

多くの謎が配され、それらがひとつひとつ繋がり
次第に事件の大筋が見えてくる。
読者もあるところでで犯人らしい人物の目星がつくが、
そこからが想像を絶する恐怖の展開が待っているのだ。

怨念がこもった幽霊が怖いか・・・?
それとも、憎しみと、妄執と、妬みと恨みに支配された
生きている人間が怖いのか・・・?
この作品は本当にどちらも怖い、ホラーミステリー。

『可視(み)える』
著者:吉田恭教
出版社:南雲堂
価格:¥1,800(税別)

ドラマ「相棒」の脚本家が描いた驚異のデビュー作「犯罪者」

「犯罪者」は著者・太田愛さんのデビュー作だ。
圧倒的臨場感、ストーリー展開の面白さ、
個性際立つキャラクターたちがさらに物語を面白くしている。
完成度の高さに鳥肌がたつ。

太田愛さんは、人気警察ドラマ「相棒」の脚本を手がけている脚本家だ。
これがデビュー作なのか?驚愕した。
面白い!面白すぎる!!!

白昼の駅前広場で通り魔殺人事件が発生した。
殺されたのは老若男女の4人。
犯人は近くのビルのトイレに逃げ込み、すぐさま
逮捕されたが、薬物中毒で死んでしまう。

脇腹を刺されながらも、ただ一人生き残った青年・修司は、
搬送先の病院で、ただならぬ様子で駆け込んできた
男から「逃げろ!あと10日生き延びれば助かる」と
警告される。

修司は何が何だかわからないうちに病院を脱走。
怪我が落ち着くまで友人の家にいた後、アパートへ戻った。
そこで、修司は謎の男に襲われる。
そのピンチに、警視庁のはみ出し刑事・相馬に命を
助けられる。

男の警告に「なぜおれが・・・?」と疑問を抱く修司。
死んだ通り魔殺人事件の犯人に疑いを抱く相馬。
2人が逃げ込んだ先は、相馬の友人でフリーライターの鑓水の
マンションだ。長期間音沙汰なしでも、いつでも、何が起こっても
相馬を助けてくれる男だった。

そんな鑓水と修司は気が合ったのか?すぐさま意気投合!

修司が巻き込まれた事件と相馬が疑問を抱いた通り魔殺人事件。
鑓水は二人の話を聞き、この事件はただの通り魔事件では
なく、裏に何かあると結論づけた。

そして3人は謎の暗殺者に追われながら、事件の真相を追う。

やがて、彼らは事件の裏に巨大食品企業と与党大物代議士の
存在を掴む。
そしてそこから浮かび上がる乳幼児を襲った奇病。
隠蔽された全ての事実を暴くべく3人はそれぞれに事件を追った。
通り魔殺人事件と乳幼児を襲う奇病、この二つを繋ぐ
「悪意」の存在。

重要なエピソードを多く配し、めまぐるしい
展開になりながらも全くぶれずに物語が進む。
場面展開の上手さは、脚本を手掛けていた影響か
ぐいぐいと読ませられる。
上下合わせて1,000ページ近い大作なのにまったく中だるみしない。

相馬、修司、鑓水の主役級は三人三様のキャラを魅力あふれる
人物像として描き分けている。
執拗に迫る謎の暗殺者、企業の良心として描かれた企業人
など脇役も非常に魅力的だ。

怒涛のクライマックスまで止まらない!
超絶技巧のミステリー大作!

『犯罪者 上下』
著者:太田愛
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:上巻¥840、下巻¥760(税別)