心霊探偵八雲ANOTHERFILES第4弾、味わい深い短編集。

心霊探偵八雲シリーズは、本編の第10作目が発売に
なりました。(まだ読んでいないのですが・・・・。)
ファンは待ちに待っていた作品。

その発売前に、心霊探偵八雲ANOTHERFILESシリーズ
第4弾「亡霊の願い」が発売になっています。
先日やっと読みました。

八雲と晴香、何だか久しぶりに友達に会ったっていう
感じで読んでしまいました。

八雲と晴香が通う大学では、学園祭が近くなって、何となく
ざわついている。

晴香はサークルの発表の準備で忙しい中、
友人から心霊相談を受け、八雲に助けを求めに行くが
いつものきつ~い言葉を浴びる羽目になる。

演劇部の友人からは、練習中に妙な出来事が続き、
それが霊の仕業ではないかと相談を受ける。

自分は呪われていると八雲に相談する女性。
その二人を偶然見かけた晴香は心穏やかではない。
晴香の方は男性の友人から、霊に憑りつかれている
ような気がすると相談を受ける。

映画サークルで撮影したホラー映画に妙なものが
写り込んでいた。そして怪現象が・・・。
映画サークルの友人から相談を受けた晴香。
呪いのホラー映画ビデオの行方は!?

友人からの相談に、ついつい乗ってしまう晴香。
八雲はそんな晴香から持ち込まれるやっかいな
事件にため息をつきつつも真剣に取り組む。
霊は何らかの意図があり、誰かに伝えたいのだ。
そんな霊の声を聞く。
八雲の優しさと厳しさが魂を救う。

八雲と晴香、相変わらずの関係だが・・・。
本編新作第10作目が気になるな~。
読みたい・・・。

『心霊探偵八雲 ANOTHER FILES 亡霊の願い』
著者:神永学
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥600(税別)

マスメディアの正義を問うミステリー「セイレーンの懺悔」

中山七里さんの「報道」をテーマにしたミステリー
「セイレーンの懺悔」を読みました。

最近、よく目にする「BPO」、放送倫理・番組向上機構。
このBPOから徹底的にマークされている、大手テレビ局の
社会部を舞台にミステリー仕立てで描かれた、
日本の報道を抉る!作品です。

葛飾区で起きた女子高生誘拐殺人事件。度重なるBPOからの
勧告で、番組存続の危機にさらされている、帝都テレビの
「アフタヌーンJAPAN」の里谷太一と朝倉多香美は、
起死回生のスクープを狙って奔走していた。多香美は、
事件の担当刑事の後をつけ、事件現場に遭遇。そこで
多香美は暴行を受け、顔が焼けただれた被害者・東良綾香の
遺体を目撃した。
里谷と多香美は、綾香の友人から、綾香がいじめられて
いるとの情報を得た。そこから浮かび上がった少年少女グループ。
その主犯格と思われる少女は、小学生連続レイプ事件の被害者
だった。
だが、里谷と多香美は強引なやり方でに主犯格の少女たちを
マークしてゆく。そしてさらなる不祥事を重ねるのだった。

報道の倫理、学校でのいじめ問題、家族崩壊。
現代の日本社会が抱える、歪みを取り上げながら、
それらを伝える「報道」とは何かを問うている。

マスコミの中に身を置きながら、報道の正義と
視聴率だけを追う組織のありかたその矛盾点を
里谷がばっさり斬っているところが面白い。

テーマは「報道の在り方」に絞ってい入るが、
少女を誘拐し殺害したのは誰なのかという
ミステリーも興味深い。
里谷と多香美が追う犯人と思われる方へと
ミスリードされてしまい、中山さんの術中にはまってしまうのだ。

また、イケメンの刑事・宮藤が、執拗に取材攻勢をかけてくる
多香美に警察官としての矜持を説くシーンが良い。
警察とマスコミは、事件真相を追うと言う点で似てはいるが、
決定的に違う点がある、警察は犯罪被害者やその遺族に
平穏な生活を取り戻すために仕事をしている。だがマスコミは
不安や不幸を拡大させているのではないか?そう問われる多香美。
果たしてそうだろうか・・・?
マスコミは被害者の悲しみを娯楽にし不幸を拡大再生産する
セイレーンなのか・・・?

里谷と多香美の報道人としての矜持と宮藤刑事の矜持が
ぶつかりあう!
瞠目のクライマックスに絶句!

『セイレーンの懺悔』
著者:中山七里
出版社:小学館
価格:¥1,600(税別)

潜入捜査をリアルに描く!「ACT2」

通常捜査不可能な事件の真相を暴くため、
潜入捜査専門の捜査官たちが闇に溶け込む!!

命の危険を顧みず、何者にでも成りきり、見事に演じ切る
不屈の捜査員たち。
シリーズ2作目は「ACT2 告発者 警視庁特別潜入捜査班」。
これがめちゃめちゃ面白かったです。

医薬品検査組織「日医検」の契約社員・向井は
イチマル制約のジェネリック医薬成分のデータを
入力しているときあることに気がつく。
もしや、データの改ざん・・・?
向井は契約社員である自分の立場と、薬品の危険度を
天秤にかけ、このデータ改竄の件を告発することを選ぶ。
そしてデータを盗み出し、追ってから逃げ切った!

その動きを察知した警察は、通常捜査不可能と判断し、
特別潜入捜査班(UST)を緊急招集した。

特別潜入捜査員という身分を隠し、劇団でいつも監督に
怒られる役を演じ続けている、田宮は実はUSTの名物
アクターだ。潜入捜査の時はいつも主役を張る。
どんな役にも成りきることが出来るからだ。

今回田宮は、日医検に潜入する事に。
彼が演じる役は、厚労省のお偉いさんの甥。
親や叔父のすねをかじり、遊びほうけているが
仕方なしに仕事をするはめになるという役どころだ。

招集されたメンバーはそれぞれの役になり、潜入し捜査を開始した。

正義のために告発者になった、向井の苦悩。
そんな彼を偶然にも救うはめになった、トラック野郎。
二人はどうにかして、改竄データを公表しようとするが。

向井が改竄データをネットに上げたことで裏で蠢く巨悪が
動き出す。

今回も潜入がばれたら命はない。役に成りきる捜査員の
動きが「超」スリリング!完璧な役に入り込もうとも
巨悪に封じられる!
いかにして真実を暴き出すのか!?

スリリングでスピーディーな展開、さらに後半に仕掛けられた
罠に読者もまんまとはまり、手に汗握るクライマックスを
迎えることとなる。
あまりの面白さに、途中で止めることが出来ない!
アクション警察ミステリーだ!

『ACT2 告発者 警視庁特別潜入捜査班』
著者:矢月秀作
出版社:講談社(文庫)
価格:¥660(税別)

警部補・原麻希の切ない過去が明らかになる。「警視庁‘女性犯’罪捜査班 警部補・原麻希 氷血」

女性刑事が主人公の大人気警察小説シリーズ「女性秘匿捜査官 原麻希」。
その続編とも言うべき新たなシリーズが始まっています。
「警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希」です。
すでに3冊が発売中で、この「氷血」がシリーズ最新作です。

捜査のためなら、猪突猛進!
天才的刑事の感とキレッキレッの洞察力で事件の本質を見抜く原麻希。
旦那は元公安刑事、15歳も年上ですでに退職。最終階級は警視正。
優しく温かい目で麻希を見守る。
この夫婦には、夫の息子とその後に出来た中学生の娘がいる。

今回は、休暇で麻希の実家がある北海道へ家族3人でやってきた。
麻希の夫・則夫は結婚して十年以上も経過しているのに、いまだに
麻希の父親にきちんと挨拶をしておらず、今回はそれが目的だった。
3人は麻希の実家できちんと義理を果たすと、観光に出かけた。
その観光中に寄った札幌の公園で、氷漬けとなった女性の遺体を発見する。

その女性は、以前東京に住んでいた頃に「女性犯罪」」捜査班に
ストーカー被害の相談に訪れていたことが判明した。
麻希は捜査に加わることになる。
道警の生活安全部ストーカー対策室室長は、瀧正義警部だった。
麻希は、瀧を紹介されたときに衝撃を受ける!

瀧は全く覚えていないようだが、瀧は麻希にとっては恩人なのだ。
麻希が警察官になったのは瀧の影響だからだ。
麻希は高校生のとき、忙し過ぎる両親の代わりに3人の兄妹の
面倒をみてきた。良い子に成りすぎたのが高校生でブチギレ不良になってしまった。
その時、瀧正義巡査に出会う。瀧は生活安全課少年係で、荒れた子どもたちに
真正面から向き合う、頼もしい巡査だった。
麻希も瀧に叱られると素直に従った。

しかし、今の瀧正義は昔の面影は全くない。
明らかにおかしい。覚せい剤の常習者のような顔つきだった。
だが、道警の誰もが瀧を空気のように扱っていた。
アンタッチャブルな存在になっていたのだ。

道警は以前から、警官たちの汚職が取りざたされていた。
銃や覚せい剤の検挙率をあげるために、暴力団を使い外国から
密輸させ、それをいかにも押収しました体で実績に挙げると
いうことを組織ぐるみでやっていた。

麻希は、今回の被害者は瀧が殺したのではないかと疑うが・・・。
しかし、瀧は誰かに操られているようにも感じる。

麻希は瀧を助けようと、女性殺害事件の真相を徹底的に暴こうと決意する。
それがどんな結果になってもだ。
また、夫の則夫も道警の膿を出すために協力を要請される。

道警での麻希の孤独な闘い。
瀧と麻希の切ない過去。それらが交互に描かれる。
これまでのシリーズにはなかった展開に、ワクワクする。
事件解決までの怒涛のクライマックスは圧巻!!

『氷血 警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希』
著者:吉川英梨子
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥590(税別)

厚労省の役人が探偵役!?「堕天使の秤」。

「変若水(をちみず)」でばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀賞を
受賞され、作家デビューされた吉田恭教さん。
受賞作が大変面白かったので、他の作品も読んでみました。
「堕天使の秤」(光文社)です。

「変若水」で初登場した、厚労省の疾病対策課、向井俊介が再登場。
「堕天使の秤」では、前回の奇妙な事件の解決をした事が認められて、
年金局調査室に異動になった。年金局調査室は、今問題になっている
年金不正受給の調査でとんでもなく忙しい所だ。
サボる事ばかり考えている向井にとっては、地獄・・・?

向井は、一人の男性の年金不正受給を調査していた。
80代の男性からの通報で、友人の生死がわからず、
友人の息子に聞くと、はぐらかされてばかりいる。
もしかして、友人はすでに亡くなり、息子は父親の
年金を不正に受給しているのではないかとのことだった。
向井は早速調査を開始したが、息子の方はすでに
転出したあとだった。
行方を探るため、息子の健康保険証の
使用状況を調査すると、意外なことが判明する。
父子ともに肝臓に重大な疾病を抱えていた。

そんな時、事件は起きる。

環八で玉突き事故が発生。
事故に巻き込まれたある車に問題があった。
ナンバープレートは偽造、しかも外交官ナンバー。
さらに製造番号まで削りとられ、4人の男女が乗っていたが、
助かったのは男性一人だけ。
病院に運ばれ手術中だが重体だ。
乗車していた二人の男女は、自白剤にも使われる睡眠導入剤を飲まされていた。

警視庁捜査一課の南雲刑事は、拉致監禁事件を疑う。
南雲は事故の調査のため、茂木と行動を共にしていた。
茂木には、重い心臓病を抱える幼い娘がいた。
心臓移植をしないと助かる見込みは無く現在ドナー待ち。
しかし、猶予期間はとうに超えており、埋め込み式の
補助装置を使うかどうか悩んでいる最中だった。

やがて、向井が調査している年金不正受給事件は、
南雲刑事たちが捜査している事故に繋がってゆく・・・。

南雲の祖父は元警官で、過去にある秘密を抱えたまま亡くなった。
その事件も妙な因果で今回の事件に絡んでくる。

仕事はまったくやる気が起こらず、厚労省ではお荷物の
向井は、なぜか鋭い洞察力を持ち、大きな事件を引き当ててしまう。
今回も南雲に刑事に向いている、といわれるくらい鼻が効くのだ。

この作品の面白いところは、向井が調べる年金不正受給事件と、
南雲刑事たちが調査する不可解な事故からやがてふたつの
事件が交差し、大きな事件へと繋がり、現代日本の医療の
歪みをも浮き彫りにしてしまう。
そして、そこへ辿り着くまで、何度も紆余曲折を経る。
暴かれた真実はどこまでも切なく、苦しく、悲しい。
何が善で何が悪なのか?どうしようもない矛盾にどう向き合っていいのか?
読者もわからなくなってしまう。

ただ、向井のユーモラスなキャラが重いテーマを少し軽くしてくれている。
読みだしたら止まらいです。社会派警察ミステリー。

『堕天使の秤』
著者:吉田恭教
出版社:光文社
価格:¥1,900(税別)

シリーズ最新作「アナザーフェイス8」切ない展開・・・。

「アナザーフェイス」は堂場先生のシリーズ中で一番好きな作品。
最新作が発売されました。
「アナザーフェイス8 潜る女」です。

このシリーズは事件の捜査とともに、主人公の大友鉄の
プライベートが赤裸々に描かれ、大友と息子の親子の絆、
また、父としての大友の微妙な心の変化、彼の息子の成長も
読むのが楽しみな作品。

警視庁刑事総務課に所属する大友鉄は、元捜査一課の刑事。
妻を亡くし、息子を育てることになった大友は、定時に
帰ることのできる部署へ異動することになった。
しかし、彼の優れた捜査能力を買っている上層部は、
何かあると、大友に現場(強行犯系)の応援をさせていた。

だが、現在は大友のバックアップをしていた上司はいない。

ある日、捜査二課の同期・茂山から声がかかった。
捜査二課は詐欺などの経済犯罪を担当する部署だ。
そんなところから声がかかるなど珍しい。
大友は、上司の許可をもらい、捜査二課が現在
扱っている、結婚詐欺事件を手伝うことになった。

茂山は、警視庁きってのイケメン、大友に現在捜査中の
結婚詐欺事件で、マーク中の男性と関係してると思われる
女性を監視してほしいという。
その女性は、都内のスポーツクラブのインストラクターだ。
元、劇団員だった大友は、ちょっと軽めのIT企業の営業マンを
装い、そのスポーツクラブの会員になり、女性に接近した・・・。

複雑に絡みあう、詐欺事件。
その中に静かだが、強烈なインパクトを放つ、
女性インストラクター。
大友は、女性インストラクターの全てを悟りきった
冷静さに、刑事としての判断が出来なくなってしまった・・・。
そんな中、事態は急展開!大友と捜査二課を予測不能な事件が襲う。

様々な現場を支援し、颯爽と事件を解決に導いてきた大友鉄だったが、
今回ばかりは勝手が違う。

大友の人間としての優しさが、裏目に出てしまった。
大きな後悔と深い絶望、切ないラストが胸に沁みた。

『潜る女 アナザーフェイス8』
著者:堂場瞬一
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥720(税別)

女子大生が未解決事件を捜査!?「継続捜査ゼミ」

次々と新作が発売になる、今野敏先生。
ファンとしては嬉しい限りです!!

しかも警察小説に限らず、警察小説ものに近い
変化球の作品がとにかく面白い!

最近読んだ中では「サーベル警視庁」が面白かったのですが、
今回の作品は、女子大生がゼミの勉強で携わった未解決事件の
真相を突き止める!今までにない設定のミステリー「継続捜査ゼミ」。
とても面白かったです。
登場したゼミの生徒たちがとても魅力的だったので、ファンとしては
ぜひぜひシリーズ化してほしい作品です。

元刑事で警察学校の校長職を最後に退官し、
女子大のゼミの講師になった、小早川。
そのゼミの名称は「刑事政策演習ゼミ」。

受講生は5人の女子大生。それぞれに個性的な女子たちだ。
小早川は、目黒署の組織犯罪対策課刑事総務課係の安斎刑事に
未解決事件の資料の依頼をしていた。
ゼミで勉強するにしても、やはり実際の資料から学びとるのが
一番だろうと考えていた。
そして、未解決事件の一つ、「老夫婦殺害事件」を取上げた。
当時の捜査資料を元に、それぞれが意見を交わす。
小早川は、様々な指摘をしながら講義を進めてゆくが、
やがて、彼女たちの指摘の鋭さに、彼女たちならこの未解決事件の
真相に辿りつけるかも知れない・・・と思い始めた。

当時の捜査官たちが気づかなかった点、見逃していた点、
疑問に思った点を洗い出してゆくと、新たな事件の様相が見えてきた・・・。
そして、ゼミの時間内に切がつかないと、大学近くのレストランで食事を
しながら話し出す。

そんな頃、運動部系の更衣室から、運動シューズの片方だけが
無くなるという事件が多発。
さらに、小早川と親しくなった、別のゼミの教授から身に覚えのない
写真が送られてきたと相談を持ちかけられた・・・。

学内で起こる身近な事件を、ゼミの女子大生たちと共に解決しつつ、
未解決の殺人事件も捜査してゆく。しかも大学の授業でだ。

今までの警察小説には無い、斬新な設定に興奮しつつ、
なぜ犯人はつかまらなかったのか?
何が原因だったのかをつきつめてゆく。
その過程がとても面白かった。

シリーズ化期待!!

『継続捜査ゼミ』
著者:今野敏
出版社:講談社
価格:¥1,600(税別)

ドラマティック!警察ミステリー「内通者」。

堂場瞬一さんの警察小説です。
2017年2月の新刊。
本格的な警察小説でありつつ、家族との絆がリアルに
描かれた、これ、ドラマにした面白いだろうな思った作品
「内通者」(朝日文庫)です。

千葉県警捜査二課の結城は、千葉県土木局とある建設会社の
汚職事件を追っていた。
捜査の発端は、建設会社の窓際社員による内部告発だった。
彼の情報により、汚職に手を染めている、建設会社役員と
県土木局の部長、二人を絞り込みんだ。
そして、結城をはじめとする捜査二課で連日張り込みを続けていた。
だが、なかなか尻尾をつかませない。

そんな時、結城の妻が「脳幹出血」で倒れた。
病院にかけつけたが、妻の意識は戻らず亡くなってしまった。
なぜ気づかなかったのか!と娘に責められた。
あまりに突然のことで、結城は茫然自失の状態だった。

妻を失った悲しみを抱えつつ、現場復帰を果たした結城だったが、
捜査は進展せず、プライベートでは娘との距離の取り方に悩んでいた。
そんなある日、娘から連絡が来た。
しかし、娘にいつもの元気がない、不審に思った結城だったが、
娘に遠慮してしまい何も問うことが出来なかった。
結城の娘は実はあることで悩んでいたのだ。
見知らぬ男から「あんたは結城の娘じゃない」と電話が入ったこと。

結城の家族に忍び寄る悪意。
そして、内部告発者の不可解な動き。
この汚職事件は、結城と彼の娘を巻き込み、
次第にスリリングな展開へと発展する。

警察小説の要ともいうべき、汚職の捜査の経過、
これが実にリアルな描写。
内部告発者の揺れ動く心理状態。
この汚職事件は、本当の事なのか?次第に疑心暗鬼になってくる。

また、結城の娘に迫る危機。刑事の娘なんだからと突っ張るが
悪意はすぐそこまで迫ってきているのだ。

事件捜査の過程は本格的な警察小説だ。
じわじわと容疑者たちを追いつめる刑事たちの動きは
非常に臨場感があり、読み応えがある。
だがこの作品の凄いとところは、結城と娘の関係が
濃厚に描かれていること。
ただの警察小説ではなく、家族を描くことによって
奥の深い作品になっている。

シリーズもたくさんあるが、私はこの作品を読んで、
益々、堂場作品を好きになってしまった。

『内通者』
著者:堂場瞬一
出版社:朝日新聞出版(文庫)
価格:¥760(税別)

リベンジ・ミステリの衝撃!「GIVER 復讐の贈与者」

本の雑誌社「おすすめ文庫王国2017」国内ミステリー部門で
第1位になった、「GIVER 復讐の贈与者」日野草(KADOKAWA)
表紙もかっこ良くて手に取りました。

法では裁かれない犯罪、罪を犯しながら逃げおおせた
犯罪者たち・・・。そんな者たちを許せない被害者たち。

そんな被害者たちは、復讐代行業者にリベンジを依頼する。

そして、復讐代行業者は依頼者の意を汲み、
彼らの望み通りに復讐を完遂する。

6編の短編は、復讐される側の視点で描かれ、
謎の男の登場によって、超スリリングな展開に変化する。

思いもよらない方法で、標的の一番の弱みを利用し操る・・・。
謎の男によって暴かれる彼らの過去。
そして、何を求められているのか、何をされるのかわからない恐怖。

正体不明の復讐代行業者は常に冷静に、そして冷酷に彼らに
言い渡す。そこに感情は一切ない・・・。
あるのは、生か死かの宣告だ。

6つの物語から浮かび上がっていくるのは、リアルな死への恐怖と
復讐される側の息遣い、そしてとてつもない緊張感だ・・・。
かれらに最もふさわしいシチュエーションで恐るべき復讐の
幕があがるのだ・・・・。

読んでいるこちら側もドキドキする!
こんなリベンジ・ミステリ読んだことない!

新感覚のミステリー!

『GIVER 復讐の贈与者』
著者:日野草
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥760(税別)

心に深く刻まれる・・・。警察ミステリーの極致「慈雨」

「臨床真理」でこのミス大賞を受賞後、上質なミステリーを描く
柚月裕子さん。
「最後の証人」「検事の本懐」「検事の死命」の3部作は
法廷ミステリーの最高傑作。
そして昨年上梓された、「孤狼の血」は、強烈な個性を放つ
悪徳刑事の姿を哀切たっぷりに描き、警察小説に一石を投じ、
日本推理作家協会賞を受賞しました。
現在、波に乗っている著者の最新作は、「慈雨」です。

読み終わったら泣けてきました。

今作「慈雨」は、北関東で連続して起きている幼女誘拐
殺人事件をヒントに描かれたと思われる警察ミステリー。

退職し、妻と二人でお遍路の旅に出た元刑事・神場。
彼には、数々の事件の中でただ一つ忘れられない事件があった。
それは16年前に、管内で起きた幼女誘拐殺人事件・
金内純子ちゃん事件だ。
捜査本部は、遺体発見場所付近で目撃された白い軽ワゴン車
と類似する車を所有していた人物、八重樫を被疑者とした。

八重樫は地元に住んでおり、土地鑑があった。
両親は亡くなり、結婚もしていない。さらに、
純子ちゃんの死亡推定時刻にアリバイが無かった。
当時導入された新しい科学捜査、DNA型鑑定で純子ちゃんの体内に
遺された犯人と見られるDNA型と八重樫のDNA型が一致。
捜査本部は八重樫を純子ちゃん誘拐殺人容疑で逮捕した。
そして起訴され裁判にかけられたが、無罪を主張した。
しかし、DNA型鑑定が決めてとなり、懲役20年の判決を受けた。

当時、純子ちゃん事件の捜査を担当していた神場は、
ずっと違和感を感じたまま捜査をしていた。本当に
八重樫は犯人なのか・・・・と?

ところが、お遍路中に16年前の事件と同様の幼女誘拐殺人事件が起きた!
神場は、すぐさま、元相棒だった後輩に連絡をとった!!
心が揺れる!ざわつく!夢の中に出てくる純子ちゃんの悲しそうな顔・・・。
やはり・・・真犯人は他にいたのか・・・?
神場は、元相棒と元同僚に捜査のアドバイスを懇願される。
悩みつつ、それでもやはりこの事件に触れないでいることは出来ない。
神場は妻とお遍路の旅を続けながら、事件のことを思った。

16年前と現在の事件の解明を物語の本筋に置き、
退職した、元刑事が自身の過去を振り返る・・・。
妻との絆、同僚の死、娘への想い。
神場には誰にも言えない秘密があり、その秘密も
事件の解明とともに暴かれてゆく。
刑事としての矜持と正義感が16年前の事件の真実を暴く。
妻と娘を裏切っている自分を許せないからだ。
今度こそ間違いを犯してはいけない・・・。

正義感あふれる元刑事の贖罪と悔恨の旅。
刑事人生でただ一つの過ちを犯した自分自身と向き合い、
新たな一歩を踏み出す元刑事の姿に胸が熱くなる。

『慈雨』
著者:柚月裕子
出版社:集英社
価格:¥1,600(税別)