巧妙な殺人トリックに瞠目!「変若水(をちみず)」

積読から2012年に購入した、ミステリ作品が出てきました。
島田荘司氏選、第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作、
『変若水(をちみず)』(光文社刊)です。
著者は、島根県在住の吉田恭教(やすのり)さん。

ミステリの舞台は島根県の奥出雲にある架空の村。

厚労省に勤務する向井の幼馴染の女医が、ラッシュ時の駅で
突然死した。偶然その場に居合わせた、医者が必死になって
蘇生を試みてくれたが、意識を取り戻すことはなかった。
幼馴染は、向井にとって姉弟のような存在だった。
幼い時から上昇志向のない向井に喝を入れ続けてくれた。
亡くなった衝撃はあまりにも強く、日頃の怠け癖に
さらに拍車をかけ、働く意欲は失せていた。

そんな向井が再起するきっかけになったのは、幼馴染のパソコン
に友人から送られてきた一通のメールだった。
ウイルスメールに犯され動かなくなった彼女のパソコンを再起動し、
発見したメール。誰が何のためにウイルスを仕込んだのか?
さらに、そのメールの内容に向井は戦慄を覚えた・・・。
その友人は島根の病院に勤務する医者だ。
その病院では厚労省がひっくり返るような事件が起きていた。
これはその告発文ではないか!!
幼馴染はこの告発文のせいで殺されたのではないか?と疑惑を持つ。
すぐさま、該当の病院に勤務する幼馴染の友人に連絡をとった。
だが・・・その友人も亡くなっていたのだ・・・・。
告発文に関係する二人の若き女医の突然死・・・。
これは、連続殺人事件ではないのか・・?

またもや厚労省を揺るがす一大事件がおきたのでは・・・?
厚労省の上層部は、告発文の内容の真偽を確かめるために
向井に調査を命ずる。そのパートナーは、向井の元恋人。
向井の不誠実のせいで別れてしまった年上の美女。
そして上司・・・。向井は元恋人のパワハラまがいの
無理難題と格闘しつつ、事件の大本に迫ってゆく。

彼らが辿り着いたのは、島根県と広島県の県境にある雪深い村。
そこは変若水(をちみず)村と呼ばれ、ある一族が絶大な権力を
ふるっていた。そしてそこでは誰も見てはならないとされる、
雛祭りが行われていた・・・。

旧い因習にとらわれた閉鎖的な村で起きた連続失踪事件。
若い女性が眠る墓荒らしの過去。さらに隠蔽された奇病。
それら全ての事件の裏に踊る邪悪な人間の影・・・。
彼女たちの死の原因はここにある!?

現代医療を駆使した、大胆な殺人トリック。
閉鎖された村で起こるホラーまがいの事件。
そして、身勝手すぎる人間の悪意の介在。
ミステリーの面白さが凝縮された、本格医療ミステリー。

物凄く面白くて、いっきに読んでしまいました。

『変若水(をちみず)』
著者:吉田恭教
出版社:光文社
価格:¥2,000(税別)

警察の草創期の捜査を描く!「サーベル警視庁」

今野敏先生の最新刊は、明治時代の警察を描いた作品。
「サーベル警視庁」です。

時は明治38年、日露戦争まっただ中。
警視庁内でもその話で持ちきりだ。

そんな時、不忍池で変死体があがったと連絡が入った。
警視庁第一部第一課の面々たちは、早速不忍池に向かった。

警視庁第一部第一課は、鳥居部長、(幕末の怪物・鳥居耀蔵の縁者らしい・・)
を筆頭に、仙台出身の葦名警部、服部課長以下、岡崎上位巡査、柔術の猛者・久坂、
剣術の達人・岩井、私服刑事(でか)・荒井巡査という面々。

不忍池で発見された変死体は、帝国大学の教授らしい。
第一発見者は富山の薬売りだという。
岡崎たちは、その薬売りから事情を聞こうと、所轄の本郷警察署
に向かう。しかしはすでに放免された後だった。
そんなに簡単に放免しても良いのか?多少違和感を感じる岡崎たち。
殺害された、帝国大学講師は高島と言った。高島は急進派で日本古来の
文化を排斥し、諸外国にならうべきだと強く発言していた。
同じ日、陸軍大佐も高島と同じような手口で殺害されたとの知らせが入った!!

明治時代の警察署が現代の警察の基礎になりつつある感じだ。

維新の立役者は、薩摩・長州、その出身者が明治政治を牛耳っている。
そういう影響が色濃く残り、様々なところで取沙汰されている様子が
非常によくわかる。
警察内の権力バランスもやはりそうだ。
また、この時代では、維新とは言わず、瓦解と言う言葉を使って
江戸と明治の境目を語っていたようだ。
幕末から明治維新後の様子を市井の側から語れているのは
とても新鮮に映った。

興味深かったのは、伯爵の孫で探偵の西小路や、一般市民を
警察の協力者として捜査に加わっているところがとても
面白いと思った。

特に実在の人物を架空の人物に絡ませ捜査をすすめる
過程に感激した。
明治時代に活躍した人たちの名前が数多く登場する。
知っている人物の名前が捜査上であがってくると
思わずニヤけてしまった。

明治時代の警察小説ではあるけれど、とても新鮮に感じた。
今野節はここでも炸裂しています!!

『サーベル警視庁』
著者:今野敏
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,600(税別)

祝!アニメ化決定「バチカン奇跡調査官」。シリーズ最新作は短編!

2017年夏にTVアニメ化決定です。
ファンとしては嬉しい限り!!!!

それはさておき、「バチカン奇跡調査官」シリーズ
最新作は短編集。「ゾンビ殺人事件」です。

今回の短編集は、ロベルト&平賀の他に
サブキャラクターである、FBI捜査官、ビル・サスキンス
凶悪犯罪者・ローレン&イタリアのカラビ二エリ・メデオ大尉が登場。

短編なのに、読み応えがあり、かなり面白かった。

1、チャイナタウン・ラブソディ
閑職にまわされている、FBI捜査官、ビル・サスキンス。
彼のただ一人の部下は中国人の周弥貝(ジョウミーベイ)、
通称ミシェルだ。
ある日、彼の婚約者がチャイナタウンで何者かに誘拐された。
それがどうも、妖怪のしわざらしい・・・・。
その正体は、不老不死を願いとうとう妖怪になってしまった
秦の始皇帝。彼は本当に死なない身体を求め、300年に一度
ある特徴をもった女性の生き血を飲み干す。
その特徴を持った女性こそ、ミシェルの婚約者だったのだ。
ビルは半信半疑・・・。だが実際に始皇帝とともに眠っていた
兵馬俑が、美術館でいきなり動き始めた映像を見て真実と確信。
ミシェルの婚約者を救うために、ビルも一肌脱ぐことに・・・。
そんなビッグな妖怪、どうやって倒す・・・?
中国の妖怪伝説をお姫様救出劇に変化させた、スリリングな一編。

2、マギー・ウオーカーは眠らない
世界でも指折りの科学者、マギー・ウオーカー。
トップクラスの科学者が集まる研究所の主任。
ただ、考え方はあまりにも合理的すぎて超変わり者。
そんな彼女はある日、マフィアによる殺人事件を目撃した。
夫婦らしき男女が殺され、その男児が1人遺されてしまった。
マギーは男児を助けたが、その子の面倒などみていられない・・・。
男児のグランマの住所もわかり、そこへ電話をしたのだが、
何やらきな臭い男どもが見張っているようだ・・・。
仕方なく、マギーはその子を助けることにする。
マギーは、自分をグランマと思い込みくっついてくる
男児に次第に心惹かれるが、そんな感情に一切
振り回されることなく、どうしたら助けられるのか?
一番合理的な解決策を思いつく。
子どもが苦手だけど、子どもの扱いは非常に上手い
マギーの行動力に拍手!!!!

3、絵画の描き方
ある日、平賀の元へバチカンの絵画修復士と名のる
青年が訪ねてきた。
青年は、バチカンの倉庫に眠る絵画の管理をしているようで、
その中に仕舞われていた、ある画家に心を奪われてしまった
という。修復するにしても、どのような絵の具が使われて
いるのか?調べたがどうしても解明出来ず、バチカン
科学部を訪ねてきたらしい。
平賀はその青年の熱い心に打たれ、絵の具解明に乗り出すが・・・。
結局、ロベルトに頼ることに・・・。
ロベルトと平賀は休日を返上し、絵画修復士のために
実際に絵の具をつくることなる。
その過程で、奇跡が起こる・・・というストーリー。
このエピソードはとても心が温かくなる。

4、ゾンビ殺人事件
イタリアの森で、男女がゾンビに襲われると言う
衝撃的な事件が発生した。しかも襲われた女性を
助けるためにそのゾンビを殺害したという。
ゾンビを殺害・・・?もう死んでるんだけど????
そのような怪事件は、カラビ二エリのメデオ大尉のところに
回ってくる。彼はこれまで誰も解明できない奇妙な
事件を次々に解決し、どんどん出世していたのだ。
だが、彼をサポートしていたのは、凶悪犯罪者・
ローレン。今回もローレンに泣きついた、メデオ大尉は
ローレンに心酔する、心理捜査官・フィオナとともに
捜査を開始。だが大量のゾンビが発見され、さらに
混迷を極めてしまった!?
またまたローレンの鋭い洞察力と鮮やかな推理に感心する。
海外では、やはりゾンビって信じられているのかな?

傑作な4編。思い切り堪能しました!!

『バチカン奇跡調査官 ゾンビ殺人事件』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥600(税別)

ぶっ飛んだ展開に唸る!!第32回横溝正史ミステリ大賞受賞作「デッドマン」

3月は、とにかく好きなミステリーを読む!と
決めていたので、以前友人から借りていた、
「デッドマン」河合莞爾著(角川文庫)を
読みました。
本読みの友人がものすごく面白かったと言った
お墨付きの作品。

頭部を鋭利な刃物で切りとられた死体、胴体のない死体
右手がない死体・・・。身体の一部を切りとられた死体が
次々と発見され、それらはすべて保存液に浸されていた。
外傷は一切なく、無くなった部分以外はすべてきれいな死体。

最初の事件で特別捜査本部が置かれた。
科警研のプロファイリング、鑑識の発表を聞いた
警視庁の鏑木警部補は、この事件は
怨恨でも、ただの猟奇殺人でもない、犯人は身体の
部位を盗んでいったのだ・・・と感じていた。
捜査本部でそういう見解を述べた鏑木は、
捜査一課長から、この連続死体遺棄事件の指揮を命じられる。
慣れない指揮官ではあったが、皆がついてきてくれた。

消えた体の部位は、いったい何に使われるのか・・・。
頭と胴体と、両手、両足をくっつけて・・・・?
鏑木の頭に浮かんだ一つのイメージ・・・。
まさか、フランケンシュタインのような怪物を作るつもりなのか・・・?

鏑木率いるクセモノ揃いの特捜班が必死で捜査をするが、
端緒さえ見つからない。混迷を極めたまま、半年が過ぎた。
そんなある日、ひとつのメールが捜査本部・鏑木宛てに送られてきた。
そこには、「僕は、死体の一部を継ぎ合わされて作られたデッドマンです。
僕たちを殺した犯人を見つけてください」と記されていた。

このメールから事件は急展開を見せる。

読み進めると、あまりの奇想天外なストーリーに面食らう。
物語の途中で、鏑木がフランケンシュタイン説を
医者に取材するシーンがある。そこで医者は、
切りとられた部位を接合して新たな人間を作り上げることは可能であると
言っている。嘘だ!マジか!?唖然!

この物語の真相を読みたくて読みたくて、止まらなくなってしまった。
空前絶後の真相にぶっ飛ぶ!

あまりの面白さに読み終わった後丁寧に解説を読んだら、
横溝正史ミステリ大賞受賞作と記されていた。
全くノーマークだった。(うかつ~~~)
それにしても、横溝正史ミステリ大賞受賞作は面白すぎる・・・。

『デッドマン』
著者:河合莞爾
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥560(税別)

恐すぎました・・・。「黒面の狐」

ホラーミステリの第一人者、三津田信三さんの
「黒面の狐」(文藝春秋)を読みました。

以前、三津田さんの「怪談のテープおこし」を
読んだ時はもろ怪談だったので、恐かったのですが
この「黒面の狐」は、もっと超自然的な恐ろしさを
感じてしまい、小説なのにとても怖いなと感じました。

戦後、朝鮮から引き揚げてきた一人の青年・物理波矢多(もとろいはやた)。
居場所はなく、なんとなくやってきた町でぶらりとしていると、
炭坑の手配師らしき男に声をかけられた。
少し強引なやり口だったが、今なら炭坑夫くらいしか
仕事口はないだろうと思い、ふらふらとその手配師についていった。
その矢先、別の男から声をかけられた。
波矢多は知的で優しそうなその男に、危うい炭坑に連行される
ところを助けられたのだ。
二人は何となく意気投合し、男が務める炭坑で共に働くことになった。

ただ、波矢多は朝鮮の大学を卒業しており、
それが炭坑の上層部にばれるとなにかと目をつけられるので、
黙って炭坑夫を続けた方が良いと言われた。

毎日、暗い穴のような所で汗だくになりながら炭を掘るのは
重労働だった。
しかも、炭坑にはタブーがあり、怪事件に遭遇した男もいた。
その中で特に興味深いのは、狐の面をかぶった美しい女の話だった。
いるはずもない炭坑のなかに出没する、狐の面の美女。
その女に魅入られると男はみんなおかしくなり、消えてしまう。

波矢多が仕事に慣れた頃、大参事が起こった。
ガス漏れが原因で炭坑内で爆発が起こったのだ!
波矢多は助かったが、親友は穴の中へ取り残されてしまった。
助けに行きたかったが、ガスが充満して2次災害が起こる
可能性があるため、会社の指示に従うことになった・・・。
そして、この事故からのち、不可思議な連続殺人事件が起こった。
さらに、事件の現場で目撃される、黒面の狐の姿・・・。
一体何が起こっているのか・・?
波矢多は事件を調べることに・・・。

炭坑内で起こる不思議な怪事件と、後半に起こった連続殺人事件。
2つの事件は繋がっているのか?
調査の過程で見つかったある朝鮮人青年の炭坑での記録!
それは目を覆いたくなるような、朝鮮人に対する日本人の
悪行が綴られていた。
朝鮮人たちの恐怖は、怪奇現象でも真っ暗な炭坑でもない。
日本人こそが恐怖だったのだ。

太平洋戦争中、強制的に日本に連れてこられ炭坑夫として働かされた
朝鮮人たちの無念が物語から浮かびあがってくる。
その叫びのようなものを、このような形で著者は描いた。

まさに背筋が凍るほどの衝撃!!!
覚悟して読んでください。

『黒面の狐』
著者:三津田信三
出版社:文藝春秋
価格:¥1,800(税別)

急転直下!「紅霞後宮物語第5幕」

「紅霞後宮物語」、待ちに待った第5幕が
発売されました。

今回は、皇后・小玉がありえない疑いをかけられ
ピンチに!!
文林、どうする!?

湖西の騒動は収まったが、事後処理に追われる文林。
隣国も怪しい動きを見せ、文林の悩みは尽きない。
そんな疲れを癒やしてくれるのは、大好きな帳簿
を見ることと、頭に浮かんだのは不本意ながら小玉の顔・・・。
小玉も、文琳の事が気になり、出向いて行くと、
疲れ果てた文林が今にも倒れそうになりながら
仕事に追われていた。あまりのことに小玉は
文林を休ませることに。
お互いを知り抜いている関係だからこそ、
この夫婦はなりたっているのだ・・・

ところが、「娘子の貞節に問題あり!」
突如、小玉の不義疑惑が持ち上がった。
はあ・・・!?そんなバカな!!誰もが耳を疑った。
だが、文林はそこに邪悪な陰謀の陰を見た・・。

紅霞宮を巻き込み蠢く陰謀・・・。
文林にないがしろにされる司馬淑妃。その父親・司馬尚書の謀略か。
それとも・・・・?。
皇后・小玉を失脚させるために張り巡らされた罠!!

推移を冷静に見つめる小玉は、ある夜文林のもとを訪れる。
そして二人の関係にも変化が!?
二人ともいい加減に素直になってよね!とツッコミを
入れたくなる・・・・けれど。

急転直下の展開に、ワクワク、ドキドキ、ハラハラ!!!
させられました。

次はいつ・・・?

『紅霞後宮物語 第5幕』
著者:雪村花菜
出版社:KADOKAWA(富士見L文庫)
価格:¥600(税別)

シリーズ中最もスリリング!「潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官」

大人気警察小説シリーズ「法医昆虫学捜査官」。
最新作は「潮騒のアニマ」です。

今回は、謎のミイラ事件を岩楯刑事&赤堀博士コンビが
解明します。

東京都の小さな離島で、若い女性のミイラ化した遺体が発見された。
解剖医は、首つり自殺で死後3か月以上経過しているとの
所見だったが、法医昆虫学者・赤堀は、遺体に「昆虫相」がないことが
気になった。
気になったら最後、とことんまで解明しないと気が済まない赤堀は、
独自で調査を開始した。
かたや、岩楯刑事は、離島の所轄刑事・兵藤とコンビを組み、
周辺の聞き込みをしていた。
すると、妙なばあさんから妙な話を聞き出した。
離島はミイラ遺体発見でマスコミが殺到!
そんな中、赤堀は学校跡の校庭にテントを張って泊まり込んでいた。
能天気な赤堀は、獣医と仲良くなり、その獣医が飼っていた犬と
じゃれ合っているとき、犬の体についていた茶色の蟻を発見する。
詳しく調べてみると、その蟻はアカカミアリという南米で生息
している外来アリだった。
なぜ、こんなものが日本にいるのか・・・?
岩楯に話をしようと連絡した赤堀は犬の行動に注目!そして犬の行動を
追っていくと、島の先の洞窟のような場所に辿り着いた。
岩楯らと合流した赤堀は3人で洞穴の奥に入った。
そこで3人が見たものはなんと、ミイラ化した遺体が5体!
その5体のミイラからアカカミアリがわいてきた。大量の
アカカミアリにかまれると死に至ることもある!
遺体を運び出すまえに、アカカミアリを退治することになった。

アカカミアリ出現で、ミイラ化した遺体に昆虫相が見られなかった原因を掴んだ
赤堀と岩楯は、改めて遺体の死亡時期を調べ直した。
すると今まで見えなかったことが見えてきたのだ・・・。

ミイラ化した女性の暗い影、自殺志願者、善人の顔をした悪魔。
様々な人間の暗部が絡み合い、そこに不気味な虫たちの
生態が重なって、複雑な事件を起こした。
そしてそれに真っ向から挑んだ赤堀。
赤堀の天然さが今までにない危険な事態を招くが・・・。

今回の事件、赤堀の行動にさすがの岩楯も肝を冷やした・・・。
どうなる!?「法医昆虫学捜査官」。
益々、さらに益々面白さが増す!
次回作に期待!!

『潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官』
著者:川瀬七緒
出版社:講談社
価格:¥1,500(税別)

本当に鳥肌物!!「夜行」

本屋大賞にノミネートされた、「夜行」を読みました。

森見さんの作品は「ペンギン・ハイウエイ」「聖なる怠け者の冒険」
などファンタジックな作品は読んだけれど、今回の「夜行」は
ホラー?
読めば読むほど鳥肌が立つ・・・。

尾道、奥飛騨、津軽、天竜峡、鞍馬。
旅先で出会う謎の連作絵画「夜行」。
その絵は不思議な絵だ。

尾道で妻と連絡がつかなくなった夫が、ある廃屋で
妻とそっくりな女性と出会う。
その女性は妻なのか?それとも違う人物なのか?
ホテルの男性スタッフはそこには誰もいないというが・・・。

奥飛騨に旅行にいった男女4人。
その途中で年配の女性を同乗させた。
その女性は「未来が見える」と言った。
そして、車の中の二人に「死相」が見える
と言ったのだ。
その言葉を誰も信じなかったが、宿についたとき
その二人とはぐれてしまった・・・。

津軽へ向かうため、寝台列車「あけぼの」に乗っていた
夫婦とその友人。
その友人が列車で通る時に火事を見たと言った。
さらにそこで手を振る女性を見たと・・・。
そんなはずはない。燃える家を確かめるため、列車を降りた
3人。その途中で友人が見えなくなる。
妻はその家が気なって仕方ないが、夫は不気味な雰囲気に
恐怖を感じ、家から離れるように促すが・・・。

天竜峡に行く飯田線に乗車した時のこと。
女子高生と坊さんと同乗した男性。
女子高生の不思議な魅力に取り込まれそうになる。
かたや坊さんは、その女子高生を恐れているように
見える。
この女子高生は一体何者だろう・・・?
そう考えた時にふとじわっと恐怖が背中を
這いあがってきた・・・。

この4つの物語には連作絵画「夜行」が登場する。
その不気味な絵と物語の不気味な繋がり・・・。
読んでいると次第にぶわ~っと鳥肌が立ってくる。
この本の不気味さになかなか気がつかない。
最終の「鞍馬」を読んだときにホッと一息
つくが、それまでの何とも言えない怖さは筆舌に尽しがたい。

初めて読んだ森見さんの本格ホラー。
何とも不可思議な体験をしているようだった・・・。

『夜行』
著者:森見登美彦
出版社:小学館
価格:¥1,400(税別)

40年前の誘拐事件の真相に迫る!「真犯人」

書評を読んで、とても気になっていたミステリ作品
翔田寛さんの「真犯人」を読みました。

昭和49年に起こった、男児誘拐殺害事件。
謎だらけの誘拐事件は、当時の捜査を混乱させ、
未解決のまま、14年が経過した。
そして、静岡県警に新たに着任した県警本部長の肝いりで
この誘拐事件を時効までに決着させるため、
継続捜査班のほかに特別捜査本部が置かれた・・・。

平成27年、8月。
高速道路のバス停のあたりで年配の男性の変死体が発見された。
裾野署に捜査本部がおかれ、遺体発見現場の地取りが開始された。
日下刑事&柳刑事は被害者周辺の聞き込みを行った。
その過程で、被害者・須藤勲が昭和49年に起きた、男児誘拐殺人事件の
被害者の父親だということが判明した。
捜査本部は、40年以上も前の誘拐事件と関係があるのか
疑問をもったが、殺害現場はその誘拐事件の身代金受け渡しの
最初の場所だったことが判明したのだ。

日下と柳は、時効直前にその誘拐殺人事件の特別捜査本部を
指揮した、当時の警視・重藤の話を聞くことになったのだ・・・。

二人を前に、重藤は重い口を開く・・・。
昭和63年、誘拐殺人事件から14年後の捜査の過程を詳細に語り始めた・・・・。

当時の誘拐事件発生時の状況は、混乱を極めていた。
まず、電話の逆探知に失敗し、犯人の声が残せなかったこと。
身代金受け渡し現場に犯人が現れなかったこと。
身代金要求が電話から手紙に変ったことの解明が為されなかったこと。
捜査本部の数々のミスが、結局時効直前まで解明されなかったのだ。
重藤は、継続捜査班を最小限にとどめ、新たな角度から事件を
見直すために、優秀な刑事を揃え捜査にあたらせた。
やがて、当時の捜査では発見できなかった事実が浮かび上がってきたのだ・・・。

特別捜査本部で次々に明かされる事実。
それは、不気味な人間の心の闇とどうしようもないくらいに
苦しい真実を暴き出した。だが・・・。

誘拐殺害事件から40年の時を超え、新たに発生した殺人事件は、
当時の事件の「真犯人」を明らかにした。
長い年月を経て、誘拐事件の謎も解明されてゆく。
その捜査過程がこれまでの警察小説にはみられない面白さだった。

警察小説ファンにおススメの1冊。

『真犯人』
著者:翔田寛
出版社:小学館
価格:¥1,600(税別)

早くも大人気!「新東京水上警察」シリーズ第2弾「烈渦」

吉川英梨さんの新しい警察小説「新東京水上警察」シリーズは
早くも警察小説ファンに大人気です!

東京湾を舞台に、犯人を追いつめ疾走する警備艇・なでしこ。
その臨場感には圧倒されます。

シリーズ第2弾となる「烈渦」
東京湾に係留されている、元南極観測船「宗谷」の施錠された船内で、
男性の腐乱死体が発見された。
東京水上警察・五臨署の碇たちは警備艇で現場に急行するが、
湾岸署と捜査権争いになってしまった。
捜査権は、湾岸署に持って行かれた碇たちは、独自に捜査する。
やがて、腐乱死体の身元がわかると、容疑者も浮かび上がってきた。

「宗谷」に愛情を注ぎ過ぎて家族との摩擦が多かった男は、
ある事件に巻き込まれ、船室に閉じ込められてしまった。
必死に家族に助けを求めたが、妻は夫の連絡を無視した。
その結果、夫は熱中症で死んでしまったのだ。
妻は「未必の故意」という夫殺しの容疑で逮捕される。

しかし、なぜ男が船室に閉じ込められたのか・・・?
一体そこで何が行われていたのか?
碇たちは、さらに捜査を続ける。
そんな時、捜査中に怪しいと目をつけていた男が拉致されたと
男の恋人から連絡が入った!

この頃、都心に最大級の台風が迫っていた。
碇たちは事件の重要な端緒をつかんでいたが、
警備艇は、東京湾の安全を守らなくてはならない。
台風警備と拉致事件どちらが重要なのか?
台風がきても捜査は続けなければ!という碇の熱血さに
負け、警備艇は台風組と事件を追うため、二手にわかれることになった。

シリーズ第1弾で、碇の部下、日下部刑事と恋人同士だった
海技職員の有馬礼子。しかし碇に心を奪われ想いをぶつけた。
2弾では、碇と礼子のその後も描かれて、物語を通して二人の
関係の微妙な変化を楽しむことができる。
さらに日下部刑事は、礼子に振られたあと、情報屋として
使っていた湾岸署の事務員と結婚すると言い出した。
その裏には何かあると、碇は思っていた。
上昇志向の強い日下部だが、碇にとってはかわいい部下。
心配していた。

そして、とうとう台風が上陸した。
それぞれの職務を全うしようと碇たちは必死に事件と台風と闘うことになる!

凶悪事件、台風による水害と救出、さらには都政に絡む陰謀までも描く。
圧倒的迫力で迫る、海上での闘いに息を呑む!!
1弾を上回る面白さだ!

「烈渦 新東京水上警察」
著者:吉川英梨
出版社:講談社(文庫)
価格:¥720(税別)